ソフトスイッチングによるインバータの
高効率化・高速化・小型化
ARCP(補助共振転流ポール)インバータを用いた三相PMSMモータ駆動の開発事例です。モデルベース開発により、試作前に損失・熱・EMIを評価し、開発の手戻りを抑制しました。
導入>事例概要
背景
インバータは可変速駆動の主力システムとして技術が成熟してきましたが、近年の変化があります。
近年、大電力・高速パワーデバイスが実用化され、高速スイッチングによってより小型の大電力インバータが開発されています。三相インバータの大電力化・高周波化では、ハードスイッチングに起因するスイッチング損失、EMI(電磁妨害)、電圧ストレス(dv/dt)の増大が開発課題となります。EVや高性能モータドライブの分野では、ソフトスイッチングへの適用が進み、従来のハードスイッチングインバータ(HSI)に対して効率・電力密度の改善が進められています。
課題
高速スイッチングが引き起こす損失増加と、その裏側にある物理現象です。
ハードスイッチングの限界
スイッチングの瞬間に電圧と電流が重なり、損失・発熱・EMI・素子ストレスが増加しやすくなります。高周波化するほどこの傾向は強まり、効率低下につながります。
高度な制御技術の必要性
効率低下を改善するには、補助共振回路と精密な制御タイミングにより、ターンオン/オフ時の電圧・電流をゼロ近傍へ誘導する高度な制御技術が求められます。
ハードスイッチングでは電圧・電流の重なりが損失を生み、ソフトスイッチングではZVS/ZCSにより重なりを抑制します。
改善方法
モデルベース開発によるソフトスイッチング(ARCPインバータ)の適用です。
弊社は、素子レベル・転流セル/寄生成分レベル・制御レベル・負荷(モータ)レベルの技術面をカバーしたモデルを構築し、開発初期段階のシステム設計から、スイッチング回路の詳細モデルの組み込み、制御構築および評価まで一貫して実施します。今回の事例では、補助共振転流ポール(ARCP)インバータによる三相PMSMモータ制御を対象に、電流ベクトル制御・負荷モデルを含めたシステムレベルでの検証を行いました。
- 主回路:SiC MOSFETを使用し、スナバキャパシタでターンオフ時のdv/dtを抑制
- 補助回路:GaN HEMTを使用し、負荷電流だけでZVSできない場合に共振電流を注入
- 制御:主回路・補助回路のスイッチタイミングと状態遷移を、運転点の変動に対応させて設計
結果
HSI(ハードスイッチングインバータ)とARCPインバータを同一条件で比較評価しました。
33kHzにおいて総損失は約18%改善し、より高いスイッチング周波数ではさらに損失低減効果が拡大する結果が得られています。効率改善だけでなく、熱設計や冷却部品の削減、素子ストレス低減など、製品開発の自由度を広げることが期待できます。ただし、補助回路と共振部品の追加、高度な制御構築を含め、開発のパフォーマンスをトータルで評価する必要があります。
本評価結果は、参考文献に基づく評価事例を弊社にて再現・整理したものです(詳細は技術詳細ページの参考文献をご参照ください)。
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